漢方 4つの治療原則
4つの治療原則を簡単に述べると、「1)冷えている人には、温熱剤で温める」「2)熱がある人は、寒涼剤で冷やす」「3)正気の足りない人は、補剤(ほざい)で補う」「4)病邪が旺盛な人は、瀉剤(しゃざい)で邪を除く」です。
漢方処方を形成する生薬は、寒温補瀉の性質と、辛・苦・酸・甘・鹹(かん:塩辛い)の5味、およびそれぞれに特有な薬効を有しています。
温熱剤、寒涼剤、補剤、瀉剤などを組み合わせてできた処方薬が、証(しょう)と呼ばれる体質に合っていると漢方薬は効果を発揮しますので、これを「方証相対(ほうしょうそうたい)」と言います。
生薬の数と効き目の関係
そして漢方薬には色々な原則があるのですが、その一つは、生薬数の少ない処方ほど効き目が鋭いということです。
例えば、こむら返りに頻用される芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)は、芍薬と甘草の2味ですので早く効き目が現れ、筋肉のこむら返りを素早く治します。
のどの痛みを取る桔梗湯(ききょうとう)も、桔梗と甘草の2味ですので、早くのどの痛みを取ります。もっと早く効果を表すために、甘草1味の甘草湯(かんぞうとう)という処方もあり、激しい咳やのどの痛みを素早くとります。
効き目はゆっくりなのが漢方?
漢方はゆっくりと効くというイメージを持たれる方が多いのですが、薬味数が少ないほど早く効果を表します。
逆に、薬味数が多くなると、じっくりと効果を表す処方もあります。
また、よく患者さんから長く飲んで大丈夫なのですか?という質問を受けますが、後述する理由により、長く飲むほど体が丈夫になり、体質が改善される処方がたくさんあります。
漢方薬の構成―君臣左使
このような漢方薬の処方は、異なる役目を持つ君薬(くんやく)、臣薬(しんやく)、左薬(さやく)、使薬(しやく)という4つの生薬で構成されています。
君薬は、君主すなわちその処方の中心を担う、最も重要な生薬です。
臣薬は、まさに君薬を大臣のように助けてその効能を増強する生薬です。
左薬は、その名の通り君薬と臣薬を補佐しそれぞれの薬効を増強したり、逆に薬が効きすぎて副作用が出るのを抑えたりします。その処方の優劣は、左薬の配合で決まると言われる程重要なポジションです。
使薬は、処方の中の生薬同士を調和させ、全体の味や性質を調整して、薬効をサポートし誘導する役目を持ちます。
この「君臣左使(くんしんさし)」を理解することが、漢方を深く理解する上で大切になります。
ではつぎに、有名な葛根湯(かっこんとう)で君臣左使を見てみましょう。 次へ>>
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