みなさんも「五臓六腑(ごぞうろっぷ)」という言葉を1度は聞いたことがあると思います。
五臓六腑は「陰陽五行説(いんようごぎょうせつ)」を元に作られた概念で、「木火土金水(もくかどこんすい)」に、肝心脾肺腎(かん、しん、ひ、はい、じん)を当てはめた考え方です。
腎(じん)
まずは腎(じん)。西洋医学の尿をつくる「腎臓」とは異なり、漢方の「腎」は親からもらった「先天の気」が宿る場所で、人間の成長、発育、生殖など全て関わる大切な臓器です。
同じ親から生まれた兄弟でも、非常に元気で活発な子供もいれば、なんとなく病気がちで体力がないなどの違いも「腎」が関係しています。
腎に蓄えられた父母から受け継いだ「先天の気」すなわち生命力は生涯にわたって成長、発育、生殖に関する働きを左右し、その盛衰を生(乳幼児期)、長(7歳から14歳くらい、腎の働きが活発化し歯が生え代わり髪が伸び生殖能力が備わる)、壮(17歳から32歳くらい、発育がピークに達します)、老(33歳から50歳くらい、腎の働きが衰え始め白髪や脱毛、生殖能力が衰えます)などで評価します。
また、「腎」は体の中の水分(これを津液(しんえき)といいます)の代謝に重要な働きを有しています。
「腎」の衰えは腎虚(じんきょ)とも言って、腰痛、高血圧、足腰が弱くなる、更年期障害、耳鳴り、精力減退、排尿異常、視力低下、冷え性などに関わってきます。
脾(ひ)
「脾(ひ)」は水や穀物など食べ物にに含まれる「水穀(すいこく)の気」すなわち後天の気を取り出し、生命力を補充します。
腎の先天の気と組み合わさることで生命力が活性化されると考えます。「脾」の不調は、食欲不振、下痢、肥満、体重減少、疲労、気力減退、顔色の不良、めまい、口内炎などに関わります。
肝(かん)
「肝(かん)」は腎と脾が作る基礎的な生命力を必要に応じて全身に調整配分する作用があります。これを疏泄(そせつ)作用とも言い、体全体に「気、血、水」を滞りなく巡らせる働きがあります。
「肝」の不調は筋肉痛、イライラ、精神不安、不眠、めまい、耳鳴り、手足のしびれ、頭痛、腹部膨満感、眼病、爪がもろくなる、など多彩な症状に関わります。
肺(はい)
漢方で言う「肺(はい)」はただ呼吸をして酸素を取り込む臓器ではなく、呼吸に合わせて宣発(せんぱつ)と言う呼気、発汗、体温調節や、粛降(しゅくこう)と言う吸気、納気、体の水分の配布などを行っています。
また、空気中にある「宗気(そうき)」と言われる後天の気を呼吸によって体に取り込んでいます。肺の不調は呼吸機能、水分(津液:しんえき)のバランス不良による皮膚炎、免疫機能の異常などを生じると考えられています。
心(しん)
「心(しん)」は血液の循環の他に精神活動も司ると考えられています。体に熱と活動力を提供します。
漢方では「脳」という概念がないので、「心」が脳のようにこころの働きを保っていると考えます。「心」の不調は動悸、息切れ、疲労、驚きやすい、不眠、夢を見やすい、健忘などに関わると考えられています。
|