以前、夏休みに長野県小県郡の地黄栽培畑を見学する機会を得ました。地黄は日本では自生しておらず、長野県と北海道で栽培されています。葉は濃緑色、花は赤紫ですが、生薬として根を使用するため、花はすぐに摘み取られてしまいます。
さて、地黄の成分ですが、sitosterol, D-mannitol, iridoid配糖体catalpolなどを有しているとされています。用途は、補血、強壮、解熱薬として貧血、嘔吐、虚弱症などに応用されます。
薬能は生地黄(生の地黄)、乾地黄(生の地黄を乾かしたもの、または更に炒ったもの)は清熱(せいねつ)、特に血熱(けつねつ)と言う漢方独特の「血」が熱を帯びた状態を冷ます効果があります。
また、熟地黄(じゅくじおう)は酒につけて蒸すを繰り返すなどの修治(しゅうち)を行い生薬として使用されます。熟地黄は補血の作用があります。
地黄一つとっても、どの状態の生薬を用いるかで治療目的が変わってきます。地黄が含まれている処方には次の様なものがあります。
- 『四物湯(しもつとう)』
- 『加味四物湯(かみしもつとう)』
- 『十全大浦湯(じゅうぜんたいほとう)』
- 『甘露飲(かんろいん)』
- 『葛根紅花湯(かっこんこうかとう)』
- 『?帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)』
- 『桂枝五物湯(けいしごもつとう)』
- 『固本丸(こほんがん)』
- 『五物大黄湯(ごもつだいおうとう)』
- 『滋飲降下湯(じいんこうかとう)』
- 『滋腎明目湯(じじんめいもくとう)』
- 『七物降下湯(しちもつこうかとう)』
- 『炙甘草湯(しゃかんぞうとう)』
- 『潤腸湯(じゅんちょうとう)』
- 『清胃瀉火湯(せいいしゃかとう)』
- 『疎経活血湯(そけいかっけつとう)
- 『大防風湯(だいぼうふうとう)』
- 『当帰飲子(とうきいんし)』
- 『八味地黄丸(はちみじおうがん)』
- 『牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)』
- 『補飲湯(ほいんとう)』
- 『竜胆瀉肝湯(りゅうたんしゃかんとう)』
- 『六味丸(ろくみがん)』
- 『人参養栄湯(にんじんようえいとう)』
- 『消風散(しょうふうさん)』
- 『荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)』
- 『温清飲(うんせいいん)』
など多数の処方があります。
昔は、地黄を含む処方を、患者さんの体質(証)によって生地黄、乾地黄、熟地黄に分けて使用していました。例えば、同じ四物湯であっても、どの地黄を使用するかで、治療目的が微妙に異なることがありました。最近では、エキス剤の発達により、その妙味が薄れてきていることは残念であります。
|